まちの歴史と暮らしの魅力を掘り起こし、楽しむ
長谷 健生(はせ けんき)さん
- 各務原市歴史民俗資料館 学芸員
プロフィール
兵庫県出身。
関西の大学院で日本の中世史を学んだ後、2018年に各務原市歴史民俗資料館に学芸員として採用され、各務原市に移住。
主な共著は、NHK大河ドラマ歴史ハンドブック『どうする家康 徹底解説・関ヶ原の戦い編』(2023年、NHK出版)、『中世東海の黎明と鎌倉幕府』(2024年、吉川弘文館)など。
岐阜県の南部に位置する各務原(かかみがはら)市は、航空宇宙産業をはじめとした工業が盛んな“ものづくり”のまちで、大手から中小まで多くの企業が集積しています。
「各務原市民公園」、「県営各務原公園」など、市内に大きな公園がいくつかあることも特徴です。
兵庫県出身の長谷さんは、学芸員として採用されたのを機に各務原市へ移住。
大好きな歴史に関わる仕事はもちろん、岐阜県での暮らしも楽しむ長谷さんにお話を伺いました。
Q1.移住のきっかけはなんですか?
各務原市が文献史学を専門とする学芸員を募集していたことです。
文献史学専門の学芸員の採用枠はとても少なく、全国で就職先を探していたところ、
各務原市の募集を見つけました。
最初は “各務原市”の読み方がわからないくらいの認識でしたね。
▲職場では、古文書の研究や企画展の準備などを行う
Q2.移住の決め手は何でしたか?
受験前に各務原市内の史跡を巡ったところ、非常に面白い歴史がありながら、
まだまだ研究の余地があるところに魅力を感じました。
実家の兵庫県から遠すぎない距離感も良かったです。
また、職場のある那加エリアは買い物なども便利そうで、岐阜県で暮らすイメージが湧きました。
Q3.岐阜県には移住前に来たことがありましたか?
岐阜県に対するイメージはどうでしたか?
岐阜城や岩村城などの歴史的な名所には何度か訪れたことがあります。
各務原市も通過したとは思いますが、記憶はあまりなかったです。
岐阜県は白川郷の合掌造り集落などのイメージが強く、各務原市の辺りはあまり雪が降りませんが、
いまだに実家に帰ると「雪は大丈夫か?」と聞かれます。
Q4.移住前に情報収集はしましたか?
WEBで情報収集はしましたが、実際に自分でまちを歩いたのが良かったですね。
ホテルに連泊して、何日間か過ごしました。
Q5.現在は、どんなお仕事をしていますか?
資料の収集・保管・展示から、企画展の準備、学校での出前授業、文化財などのガイド、市内外での講演会、
刊行物の原稿執筆まで多岐にわたります。
講師やガイドを行うときは、地域に密着した話題を取り入れるようにしています。
仕事を通じて歴史好きの友人ができることも多く、小学生からその親御さん、年配の方まで、
幅広く交友関係ができました。
▲出前授業の様子
Q6.地域とのつながりはありますか?
近所づきあいが密な地域ではないですが、仕事上、地域の方と関わることも多いです。
お世話になった方や近所の方から、よく野菜をいただいたりしています。
各務原市は大手企業や自衛隊基地があるため転入者が多く、
移住者であっても、地域に馴染みやすい点も良いなと思います。
Q7.暮らしの利便性はどうですか?
私は車を持っていないのですが、自転車と公共交通機関で生活できる点がありがたいです。
買い物は、イオンモール各務原インターをはじめ、大型ショッピングモールが近いので、便利です。
Q8.お気に入りのお店があれば教えてください。
各務原市付近は、おいしくてお値打ちな飲食店が充実していると思います。
市内では、パスタやオムライスの種類が豊富な「オレンジピール」によくパスタを食べに行きます。
鵜沼宿の街道沿いにある「一服茶屋 花の木」は、古民家の雰囲気があっておすすめです。
古文書をもとに一緒にメニューを開発したこともあります。
飲みに行くとなると、岐阜市まで行くことが多いです。
鮎料理が絶品のお店もあり、ぜひ一度は食べていただきたいですね。
▲「オレンジピール」のパスタ
Q9.おすすめの岐阜県の歴史スポットを教えてください。
岐阜県には良い城がたくさんあります。
岐阜市の岐阜城は、他県から来たお客さんに岐阜を案内するときによく行きます。
その他の山城だと、垂井町の菩提山城(ぼだいさんじょう)、
山県市の大桑城(おおがじょう)など、挙げるときりがありません。
関ケ原町にある「岐阜関ケ原古戦場記念館」も、
映像や展示物で“天下分け目の関ヶ原”を実感できたり、
自転車を借りて古戦場巡りができたりするので、おすすめです。
関市の「岐阜県博物館」や「岐阜市歴史博物館」は仲の良い学芸員がいるので、
お互いに企画展などを見に行くことも多いです。
▲天守閣最上階からの眺めが良い岐阜城
Q10.今後の展望を教えてください。
移住して7年目になりますが、このまちのことがわかるようになり、友人も増え、
ここでの暮らしがどんどん楽しくなっています。
今後は、論文の制作も進め、各務原市の歴史を掘り起こして、地域の方にその魅力を伝えていきたいですね。