村の自然を楽しみ、伝える仕事と暮らし
大豆村 伸也(まめむら しんや)さん・沙里(さり)さん
- 伸也さん/トヨタ白川郷自然學校 職員、沙里さん/ハンドメイド作家
プロフィール
青森県出身の伸也さんは大学卒業後、2015年に白川村にある「トヨタ白川郷自然學校」への就職を機に白川村へ移住。
アウトドアに精通したガイドなどを務める。
神奈川県出身の沙里さんは、白川村で開催されたイベントをきっかけに2019年に移住。
村の自然素材を使った小物づくりを行うほか、村内の企業にパートとして勤務。
世界文化遺産「白川郷の合掌造り集落」があり、世界中から観光客が訪れる岐阜県北部・飛騨地域の白川村。
山深いこの土地では、村人同士が助け合う「結(ゆい)」の精神が今も暮らしに根付き、伝統や地域コミュニティが受け継がれています。
昔から自然に囲まれた仕事や暮らしに憧れがあったという移住者の大豆村伸也さん、沙里さんに、お話を伺いました。
Q1.移住のきっかけはなんですか?
<伸也さん>
多彩な自然体験プログラムが楽しめる「トヨタ白川郷自然學校」に就職したことです。
大学では里山の利活用を学んだり、ツリーハウスのイベントを企画するなど、
子どもたちに自然の魅力を伝える面白さを感じていたので、
それを仕事にできるのでは、と思い就職しました。
<沙里さん>
高山市にある祖母の家に滞在中に、白川村のイベントに参加したことです。
そこで偶然、伸也さんと出会い、何度か白川村に通う中で意気投合して、同居を機に白川村へ移住しました。
Q2.現在はどのような場所で暮らしていますか?
<伸也さん>
観光客で賑わう合掌造り集落のあるエリアから少し離れた白川村南部の小さな集落で暮らしています。
元々、村内でどこに住むかのこだわりはなかったのですが、1年間、村の南部の借家に住んで、
落ち着いた環境や、地域のつながりがありながらもほどよい距離感に居心地の良さを感じました。
その後、親しくなった住民から空き家の紹介を受け、現在の住まいでの生活をスタートしました。
Q3.現在のお仕事について教えてください。
<伸也さん>
自然体験プログラムのガイドとして、子どもたちとのキャンプなど、
さまざまなアクティビティを企画・運営しています。
大学時代に知った“自然と関わる面白さ”を伝えることに、やりがいを感じています。
▲自然体験プログラムには子どもも大人も参加
<沙里さん>
昔から自然素材を使ったものづくりに憧れがあり、
村に自生するくるみや山ぶどうなどの樹皮を使った小物づくりをしています。
素材集めは伸也さんに協力してもらい、自宅でカゴやアクセサリーを編んで、
SNSや、村内外の店舗や出店で販売しています。
ワークショップも開催していますが、徐々に村内外にファンが増えていて嬉しいです。
ほかに、村内にある企業にもパートとして勤めています。
▲力強くも温かみがあり、使うほどに愛着が増す、沙里さんが作るカゴたち
Q4.地域とのつながりはありますか?
<伸也さん>
移住して数年間は、職場の社員寮に住んでいましたが、
他の村民はその地域にほぼ住んでいなかったので、自分から関わるようにしていました。
ちょうど同時期に移住した地域おこし協力隊の方がいたので、その方の誘いで村でのつながりが増えました。
<沙里さん>
村内にある企業にパートとして勤めはじめてから、知り合いがぐっと増えました。
同僚の紹介で、村の友人がどんどん増えています。
日常的にも、愛犬の散歩中に立ち話をしたり、近所の方から採れた野菜をいただいたりしています。
Q5.白川村ならではの行事はありますか?
<伸也さん>
毎年秋に行われる「どぶろく祭」が村の一大行事です。どぶろくの振舞と同じく目玉となるのが、獅子舞です。
2023年に笛の役を任され、1か月前から猛練習しました。
無事に本番を終えて、村の一員である自覚がより芽生えました。
<沙里さん>
村の南部では地域の村民が参加する「村民運動会」が開催されます。
こうしたイベントに参加すると、一気に交友関係が広くなりますね。
Q6.白川村ならではの暮らしを教えてください。
<沙里さん>
春は、山菜採りに行くのが楽しみです。
タラの芽にコシアブラ、コゴミなど、山の味覚はこの季節だけのお楽しみです。
▲採れた山菜は、天ぷら、おひたし、きんぴら、パスタなどでいただく
Q7.買い物はどうしていますか?
<伸也さん>
村内は買い物できる場所が限られているので、
月に何度か、高山市や富山県まで買い出しに行くことが多いです。
Q8.移住して大変だったことはありますか?
<沙里さん>
最初の1年間は、除雪や車の運転、虫など、村の環境に慣れるのが大変でした。
積雪量はその年によって違いますが、白川村は岐阜県内では雪が多い地域です。
▲大雪の日の朝は、除雪から始まる
Q9.白川村での暮らしの魅力を教えてください。
<沙里さん>
移住して、四季を強く意識するようになりました。
山の色の移り変わりや、長い冬が終わり春を迎える清々しさは、
都会暮らしではなかなか味わえない魅力だと思います。
不便なこともありますが、住民同士で共有できる生き方を愛しく感じています。
Q10.今後の展望を教えてください。
<沙里さん>
2024年初夏に第一子が誕生しました。
集落で久しぶりに生まれた赤ちゃんに、近所のおばあちゃんが感動してくれたのが嬉しかったですね。
山や川に囲まれた場所で育つので、自然の中でのびのび遊ぶ子になってほしいなと思います。