2019年10月19日(土)開催の『TURNSのがっこう岐阜科』は、「森林・木材」がテーマでした。
森林率が全国第2位の岐阜県。講師によるトークとワークショップを通じて、住まいや自然環境など私たちの生活と密接に関わっている「森林」と「木材」について学びました。
まず、岐阜県の紹介では、岐阜県とは一体どんなところなのか、5つのエリア(西濃地方、岐阜地方、中濃地方、東濃地方、飛騨地方)の地域性から、移住支援金や就業マッチングサイトなどの紹介をしました。
今回の参加市町村は、講師の岡田さんが暮らす岐阜県南東部にある恵那市です。
市のまちづくり地域振興課移住定住推進室の三木さんが登壇しました。
名古屋からは1時間ちょっとで来れる程よい田舎町、恵那市。
夏はとても暑く、積雪量はそんなに多くないものの、冬は滲みる寒さだそうです。
そして、恵那の秋の味覚は、栗きんとん。和菓子屋さんごとに味が違います。
この日は、『恵那川上屋』の栗きんとんを参加者の皆様に試食してもらいました。
そんな恵那市には、ビジネスの相談から移住までをサポートする『恵那くらしビジネスサポートセンター』があります。
住まいや空き家など暮らしの情報を提供したり、仕事を一緒に探してくれたり、起業や経営の相談にものってくれるとても頼りになる機関です。
特に「空き家」に関しては市としても力を入れており、入居者には空き家の改修費や家財の片付けにかかる費用補助、登記手続きに関する費用補助などを受けることができます。(対象条件や申請の手続きが必要になりますので、詳しくは以下のURLをご覧ください)
恵那くらしビジネスサポートセンター
https://enalifebizsupport.jp/
空き家バンク活用支援補助金制度
https://www.city.ena.lg.jp/life_scene/sumai_hikkoshi/jutakunojoho_chintai/2865.html
林業の就業相談から技術習得、定着までを一貫して支援する『森のジョブステーションぎふ』の紹介もありました。
通称『森ジョブ』は、就業希望者の募集だけでなく、就業後の研修や支援などもサポートし、岐阜県内の森林・林業の会社や森林組合など求人情報の紹介とあっせんをしている、とても頼れる機関です。
森のジョブステーションぎふ
https://m-job.net/
そんな「森林」「木材」に関わるには絶好の場所とも言える岐阜県で暮らしを送る2人の講師が、いよいよ登場です!
最初の講師は、恵那市で「NPO法人夕立山森林塾」として活動する岡田敏克さんです。
恵那で暮らし始めた頃は農業をしており、スギとヒノキの違いもわからなかった岡田さんですが、岐阜の自然と関わっていくうちに、農業地よりもさらに上流にある森のことが気になるようになり、「林業」に関わり始めます。
名古屋で暮らしていた頃は、森というのは美しい広葉樹が広がっているイメージでしたが、恵那に来て現実は違っていることを知りました。戦後、木材が足りなかったときに植林をしたところが、植えっぱなしで間伐されないまま放置されている現状を目の当たりにしたのです。
その後、現在所属しているNPO法人では、間伐作業や体験事業など、様々な取り組みを通じて「森林」に関わる事業を展開しています。
その「森林」と関わるやりがいについて岡田さんはこのように語ります。
「真っ暗な森が続いていて、光がささない。植物も生えないし、動物も生息しない。そんな中で、たった一人で間伐作業をはじめる。寒々しいし、雪がちらつく日もあり、厳しい環境だったけど、実は“至福の時”を過ごしていたんです。たった一人で、静寂な森の中で過ごすことが自分にとっては“最高に至福の時”でした。」
初めて木を切り倒した時は、言葉にならないほど大きな感動があったそうです。「木を切り倒して空を見上げると、木一本分の光が差し込む。森の命を繋いでいく、ということを木によって教えてもらえた瞬間でした。」その時の感動や学びを大切にしながら、今も「森林」との関わりを深めています。
二人目の講師は、岐阜県立森林文化アカデミー 准教授(専門:木工)を務める久津輪雅さんです。
福岡県出身の久津輪さんは、NHKで「クローズアップ現代」などの制作に関わり30歳で退職された後、海外留学などを経て現在の木工の職に就きました。
日本の森には様々な課題があります。それらを解決していくには、木を切っていくだけではだめで、切った木を「活用」していくことが大切なのだそうです。その活用方法のひとつとして“グリーンウッドワーク”があります。
“グリーンウッドワーク”とは、伐採したばかりの乾燥していない生木を手道具で割ったり削ったりして、小物や家具を作る木工のことです。
また、木工に関しては近年、徐々に求められている役割が変わってきていると久津輪先生はおっしゃいます。
例えば、日本の木のおもちゃをデザインして作る実習、木育プログラムの企画など、ただ作るだけではない“教育”としての側面も持ち合わせた立体的な役割が求められるようになってきたそうです。
久津輪さんが講師として務める『岐阜県立森林文化アカデミー』は、現場のエキスパートを育てる「森と木のエンジニア科」と、「林業」「木工」「森林環境教育」「木造建築」の4つの専攻がある「森と木のクリエーター科」があります。
卒業した生徒達は、今でも日本全国各地で木を扱うスペシャリストとして活躍しており、卒業生同士が組んで仕事をしているケースもあります。森林・木材に関わる一生の仲間と出会えるのも岐阜県立森林文化アカデミーの良いところです。
岐阜県立森林文化アカデミー
https://www.forest.ac.jp/
そして、いよいよ“グリーンウッドワーク”のワークショップがスタートしました!
久津輪先生が用意したのは「ヒノキ」「クリ」「ハゼ」。これらの木を使い、それぞれの木の違いを知りながら“マイ箸置き”作りに挑戦しました。
「ナイフの使い方は、スウェーデンのモデルで、実は13通りもある。」
「栗の木は、非常に強くて割れやすいので使いやすい。昔からよく使われたんですよ。」
「日本は、スギとヒノキが多いけど、スギは柔らかいのでスプーンは作りにくいんです。」
「日本に木の種類は1,000以上ある。それは日本の自然がとても豊かだということです。」
などと、木に関する豆知識を教えてもらいながら、参加者もスタッフも一緒になって手を動かしました。
黙々と木を削りながら、時々おしゃべりを楽しみながら、ワークショップは進んでいきました。
あっという間に時間が経ってしまいましたが、出来上がった“マイ箸置き”を手に取り、参加者は大喜び!
「木の温もりをこれからも大切にしていきたい」「岐阜県立森林文化アカデミーの体験も参加してみたい!」「林業に関わるのは体力的に大変なイメージがあったけど、それ以上にやりがいは大きいと感じました!」
などと様々な意見が出ました。
グリーンウッドワークのように“木に触れる”ところから、「森林」「木材」への学びを深めていきたいですね!