11月17日(日)に、東京交通会館ビル4階のふるさと回帰支援センターにて、『TURNSのがっこう―岐阜科―』5限目の授業が行われました。
今回のテーマは「デザイン」。
「デザイナー」と聞くと、なんだか言葉の響きがとても良く、憧れの職業として掲げている人も多いように感じます。
そのせいか、今回の授業では、事前にたくさんの申込者から“講師に聞いてみたい質問”が寄せられ、非常に注目度の高い授業となりました。
参加市町村は、岐阜県西南部に位置し、人口約3万4000人が暮らす「本巣市」です。
本巣市では、若者の目を引くデザインでPR冊子を作っていたり、GIDS(ギッズ)というシェアオフィスや滞在デザイナー制度を設けるなど、“デザインするまち本巣市”としてスローガンを掲げた様々な取り組みを展開しています。
本巣市がクリエイティブな視点でまちづくりに取り組むユニークな地域であることを初めて知った方も多く、参加者もスタッフもますます興味が高まりました。
GIDS(ギッズ):http://gids.jp/
本巣市HP:http://www.city.motosu.lg.jp/shisei/plan/iju/
講師は、地域で「デザイン」を軸に第一線で活躍している方々です。
2019年7月に東京・上野に『岐阜ホール』をオープンしたことでも知られている株式会社リトルクリエイティブセンター代表 今尾真也さん、テクノロジーを使いながら子ども達のの教育やデザイン思考を生かした事業を展開する『KAKKO E合同会社』代表 中村親也さん、“社会課題をデザインで解決する”をコンセプトとした『issue+design』のデザイナー 白木彩智さんの3名です。
どの方も、グラフィックを制作することだけに止まらず、「デザイン」を通じて地域に貢献し、地域の人と人とを繋げる取り組みを行なっています。
株式会社リトルクリエイティブセンター代表 今尾真也さんは、『ALASKA BUNGU』や『さかだちブックス』のデザイン・運営をはじめ、まちづくりを中心に数多くのプロジェクトを手がけてこられました。
視覚的なデザインの話だけではなく、お店やプロジェクトを始める人とともに方向性を決めていく「ディレクション」という仕事についてお話いただきました。「地域の方々とおもしろいことをしたい!」という想いや熱量が伝わり、会場全体がワクワクした空気に包まれました。
『KAKKO E合同会社』代表 中村親也さんからは、中山間部の地域におけるデザインや、デザイン思考における話をしていただきました。
「地域でなにかを成し遂げるには、この地域の問題は何かを考え、学び、自ら行動を起こす“デザイン思考”を持つことが大切。」ということを紹介し、地域課題の解決にも、地域で新しいビジネスを始めるにも、全てに通じてデザイン思考でプロセスを設計することがキーとなることをしっかりと認識することができました。
「社会をよくするデザイン」をつくり出すべく、全国を飛び回っている『issue+design』のデザイナー・白木彩智さんからは、地元である岐阜で自身が手掛けた『あかでんランド』や『郡上カンパニー』についてのお話をしていただきました。
関わる地域の方々と、親睦を深めているという白木さん。地域に溶け込み、関係性を築き上げることも一種のデザインであるということをお話されていました。
大盛り上がりだったのは、講師3名とファシリテーター・小林謙一さんのクロストーク!それぞれが担っている事業の紹介は終わり、ここからはもっと具体的な行動や考え方についてお話を聞きました。
みなさん、普段からクリエイティブ思考を巡らせているせいか、話すことがとっても奥深い…!
参加者からも、たくさんの質問をいただきました。
-「地方でデザインするには、何が必要ですか?」
中村さん「会社を作るとき、資本金は1万円だったんです。ネットワーク、電源、パソコンがあれば“地方でデザイン”はできます!」
今尾さん「資本金の話で言うと…僕は3万円で事業を始めました。車は地方なら絶対に必要です!」
-「どうやってデザインの仕事を受注していますか?」
今尾さん「ガツガツ営業をかけるのはあまり得意ではないので、まずは実績を見てもらって、それを評価してもらって、またお仕事をいただく…という循環です。」
中村さん「会社だけ先に作っちゃって、食い扶持はバイトでもなんでもして、どうやって仕事をつくるかは考えていく!笑」
-「モチベーションを保つために、何かしていますか?」
白木さん「子どもが『あかでんランド』について口ずさんでいるのを見たとき、自分が携わった仕事が、地域の人に浸透しているのを実感してすごく嬉しくなりました。まだまだ続けていきたいというモチベーションに繋がりました!」
中村さん「同じ会社の山口や本巣市に移住した中原さんに出会えたことが大きいです。同じ志を持つ人や尊敬できる人と一緒に仕事ができる、というのが自分のやりがいに繋がっています。」
今尾さん「自分たちの仕事をしてみて、まず先に気になるのは、地域の人達が喜んでくれるかどうか。そして、仕事をする際も“想いがある人”と組みたいと思っています。リトルクリエイティブセンターは、友人3人で始めた小さな会社ですが、想いを持って進めているうちに、3万円の月収からどんどんメンバーが増えていきました。だからこそ、社員もクライアントも幸せにしたいと思っています。」
-「地方に行ったら、デザインの表現は変わりましたか?」
中村さん「本巣市は課題だらけ!課題を解決するための手法がアイディアであり「デザイン」。未着手な課題が多いのが地方だから、(表現が変わったというよりは)デザインの捉え方は変わりましたね。」
-「どんなスキルが必要ですか?デザイン思考を鍛えるには何をすれば良いですか?」
中村さん「デザイン思考については、課題を見つける“観察力”が大事。同じ会社で働く山口は、その“観察力”がずば抜けているんです。」
白木さん「人の話をしっかりと聞くこと。その人がどういう状態で、どういうステージにいるのか、そのサポートをどう提供できるのかというのを考えながらヒアリングすることが大事です。」
今尾さん「その人に合った“温度”でアイディアやデザインを提供する。そして、提供しながらも、その人の“半歩先”をいけるかどうか。言われたものをそのまま作るのではなく、“半歩先”をみて付加価値をつけて提案するようにしています。」
-「岐阜への愛は、ありますか?(笑)」(実は、この質問をしてくれたのは、参加者ではなく、講師の白木さんでした。)
今尾さん「好きな人が集まっているのが岐阜。だから岐阜のことは好き!全てのことは、人が連鎖しています。『岐阜ホール』のクラウドファンディングもたくさんの人が応援してくれて温かいなと感じました。」
中村さん「僕は…逆に、あまり愛着を持たないようにしているんです。(笑)それは視野が狭くなりものごとを俯瞰的に見えなくなる可能性があるからです。」
白木さん「私には、47都道府県で岐阜を1番大切にするという目標があります!
関係性も自分がやってきたことも、全て貯金箱のように貯まっていく。そうした結果、“わたし、岐阜のこと好きかも”ってなっていくんです。」
なんとも白熱したクロストークとなりました!講師3名それぞれの、“岐阜愛”があったのです。
授業の終わりに、講師3名が口を揃えて話していたのは、「人の想いと人の想いで作り上げるのが“地域デザイン”だ」ということです。
人間同士の関わりの中で生まれるのが地域の「デザイン」だからこそ、“なんかいいな”と感じる「デザイン」は魅力であふれているのです。
やっぱり今後、地域を変えるのは「デザイン」かもしれない。
そう感じた授業となりました。